OpenAI「AgentKit」のAIエージェント構築ツール「Agent Builder ベータ版」の概要
「AgentKit」は、OpenAIが提供(発表:2025年10月7日)している、AIエージェント開発の統合ツールのセットです。
その中の「Agent Builder ベータ版」(発表:2025年10月7日)は「AgentKit」の中の一つで、 AIエージェントのビジュアル開発ツールです。
公式サイト:
Introducing AgentKit
Agent Builder
Agent Builder ベータ版・Dify・n8n の簡易比較表
- Agent Builder ベータ版では、下図のようなビジュアルなAIのワークフロー構築が可能になっています。
図. Agent Builder ワークフローイメージ ノーコードでビジュアルなワークフローの構築手法は「Dify」「n8n」と似ている面があり、注目されています。
下記の表は、当方が2025年10月時点で確認してみた「Agent Builder ベータ版」「Dify」「n8n」の比較表です。OpenAI Agent Builder ベータ版 / AgentKit Dify n8n 提供会社・リリース関連 アメリカの会社OpenAIが提供(発表:2025年10月) アメリカの会社LangGenius Inc.が提供(リリース:2023年5月) ドイツの会社n8n GmbHが提供(リリース:2019年10月)特徴 OpenAIのプラットフォーム上で動作する、AIエージェントのビジュアル開発ツール。 LLMアプリ開発のプラットフォーム。
独自データ(RAG:Retrieval Augmented Generation)に対応したチャットボットの構築が容易に実装が可能。様々な業務プロセスのワークフロー自動化ツール。
多彩な他サービスとの連携が可能。LLM(OpenAI)使用 ○ ○ ○ LLM(Claude)使用 × ○ ○ LLM(Gemini)使用 × ○ ○ ローカルLLM使用 × ○ ○ セルフホスティング × ○
※この場合はDify利用は無償○
※この場合はn8n利用は無償クラウド版 ○
Agent Builder本体の利用は無償の想定
+有償LLM(OpenAIのみ)のAPI従量課金○
Dify利用の有償プラン
※制限付きの無償プラン有り
+有償LLMのAPI従量課金○
n8n利用の有償プラン
+有償LLMのAPI従量課金ソース公開 × ○
github.com/langgenius/dify○
github.com/n8n-io/n8n公式テンプレート 有る。
agent-builder公式ページ
に6種類が存在。
(新規にワークフローを追加するとテンプレートがメニューから消える模様)公式版は無い。
非公式版は存在。https://difyshare.com/有る。
https://n8n.io/workflows/ライセンス ライセンスは、API 利用を含む商用・開発者向けサービス利用契約のOpenAI Services Agreementに準拠。
使用料金はAPI利用時と同等のAPI料金になる想定。ソースコードは公開されているが、商用利用(マルチテナントサービスでの商用利用等)に制限がある。Dify公式パートナーのTDSEによる商用ライセンス解説ページがある。 ソースコードは公開されているが、オープンソースでは無い。ライセンスは独自の「Sustainable Use License」となっており、商用利用に制限がある。 2025年10月時点では、Agent Builder ベータ版は
- 動作環境はOpenAIのプラットフォーム上のみ
- LLMの選択はOpenAIのみ
- ローカルLLMには非対応
等の差分はあるのですが、今後のリリース版で内容は変動していく可能性があると思います。
Agent Builder ベータ版の使用条件
- Agent Builder ベータ版の使用条件としては、下記の手順が必要の想定です。
-
OpenAIアカウントの登録
platform.openai.comでのSign up
※当方はChatGPTのPlusプランのアカウントが使用できました。 -
「Add payment details」でクレジット情報と住所の登録
platform.openai.comでログイン後に、「Dashboaed」→左メニューの「Agent Builder」→「Create」をクリック時にクレジット登録がない場合は、下図のようにクレジット登録が求められます。
直アドレス:settings/organization/billing/overview-
図. 「Add-payment-details」でクレジット情報と住所の登録 「Add-payment-details」をクリック後、クレジット情報と住所の登録をします。
Billing address は下表を参考にリアルな内容を反映しました。入力フィールド名 入力例 入力内容 Address Line 1 1-2-3 Nakano 番地・丁目 Address Line 2 Sunflower Mansion 203 建物名や部屋番号など、補足的な住所情報 City Nakano-ku 市区町村名 Prefecture Tokyo 都道府県名 Postal Code 164-0001 郵便番号(ハイフン付き) - クレジット情報と住所を登録して「Continue」をクリックすると、下図のように支払い設定の画面が表示されます。
図. 支払い設定 下表は支払い設定の日本語訳です。
当方は取り急ぎ、「Yes, automatically recharge my card when my credit balance falls below a threshold」のチェックを外して「Continue」のクリックで進めました。英語(English) 日本語訳(Japanese) Configure payment 支払いを設定 Initial credit purchase 初回のクレジット購入額 Enter an amount between $5 and $100 $5〜$100の範囲で金額を入力してください Model pricing モデルの料金設定 Would you like to set up automatic recharge? 自動チャージを設定しますか? Yes, automatically recharge my card when my credit balance falls below a threshold はい、クレジット残高が一定の金額を下回ったときに自動的にカードへチャージします When credit balance goes below クレジット残高が次の金額を下回ったとき Enter an amount between $5 and $95 $5〜$95の範囲で金額を入力してください Bring credit balance back up to クレジット残高を次の金額まで戻す Enter an amount between $10 and $100 $10〜$100の範囲で金額を入力してください Limit the amount of automatic recharge per month 月ごとの自動チャージの上限額を設定 Enter an amount between $10 and $100. Leave this field empty for no recharge limit. $10〜$100の範囲で金額を入力してください。この項目を空欄にすると上限は設定されません。
-
-
「Verified Organization」で本人認証
上記2点の登録でワークフローのCreateは出来たのですが、下図のようにプレビュー等で本人認証が必要のメッセージが表示されました。
図. プレビュー時の制約 Run preview is unavailable for non-verified organizations. Verify your organization to use.
本人認証がまだの場合は、実行プレビューはご利用いただけません。ご利用になるには本人認証をご確認ください。下図の画面で「Verify your identity」(本人確認)をクリックします。
表示されたダイアログで「Start ID Check」( 本人確認を開始)をクリックします。
直アドレス:settings/organization/general図. プレビュー時の制約 次に表示されたダイアログで「私は生体認証情報の処理に同意します。」にチェックを入れて「今すぐ始める」をクリックします。
本人確認を行うには、カメラにアクセスする必要があります。スマートフォンで続行するための安全なリンクをお送りします。アプリのダウンロードは必要ありません。 の案内が表示されるので、QRをスマホのカメラにかざしてアクセスします。
その後、画面の指示にしたがって本人確認を進めます。- 「国とIDの種類を選択してください」で、国は日本、IDは運転免許証等を選択
- 運転免許証の場合、表と裏の撮影をして画像をアップロード
- 「お客様の本人確認」で自撮り写真(フロント・左折・右折)を撮影し、確認
- 本人確認が完了すると、「おめでとうございます、完了です! 本人確認をありがとう」のメッセージが表示される
図. 本人認証の流れ
-
Agent Builder ベータ版のノードと線(connection)
-
ノードの種類
Agent Builder ベータ版でワークフローの作成を開始すると、画面の左辺に使用できるノードが表示されています。
図. Agent Builder ベータ版のノード ノードは下表のような内容になっています。
「Start」(開始)のノードはデフォルトで表示されており、削除できないようになっています。ワークフローで最初に実行されるノードになっています。
ノードはドラッグ&ドロップでワークフロー内に追加できます。
ノードとノードの間は、丸印のハンドルをドラッグ&ドロップによる操作で、線(connection)として繋ぐことができます。
公式サイト:
docs/guides/node-referenceカテゴリ ノード名(英語) ノード名(日本語) 内容 CoreAgent エージェント LLM モデルに指示を与えてタスクを実行するノード End 終了 ワークフローを終了させて出力を返すノード Note ノート 説明文・注釈用のノード ToolsFile search ファイル検索 文書・ファイル群を検索して情報を取得するノード Guardrails ガードレール(安全制御) 入出力の制約や安全性チェックを実行するノード MCP MCP(Model Context Protocol) 外部システム(Gmail、Google Drive等)とのアクセスを提供する接続ノード LogicIf / else 条件分岐(もし〜なら/そうでなければ) 条件分岐ノード While ループ(繰り返し) 繰り返し処理用のノード User approval ユーザー承認 ユーザーの承認(確認操作)を挟むノード DataTransform 変換 入力データの変換用のノード Set state 状態を設定 内部の状態を設定するノード -
ノードと線(connection)の削除
ノード、線(ノードとノードを繋ぐコネクション)の削除をする場合は、下図のようにマウスでその要素をクリック後に、画面右上に表示されるプロパティ内の削除アイコンをクリックします。
図. ノード・線の削除
簡易なRAGを使ったチャットボットのワークフローを作成
今回は、簡易なRAGを使ったチャットボットのワークフローを作成しながら、
動作確認をする流れで手順を紹介させていただければと思います。
-
ノードと線(connection)の設定
下図を参考にノードの追加と設定、線による結合を行なっていきます。
-
- Guardrailsノードの追加
Agent Builderで特徴的なノードのGuardrailsを追加します。Startノードの次に設定します。 - Guardrailsノードの設定(Jailbreakの設定)
プロパティで「Jailbreak」を選択します。
するとGuardrailsノードで「Pass」(異常なし)「Fail」(異常あり)のハンドルが追加で表示されます。 - Endノードの設定
Guardrailsノードの「Fail」の次の処理として、Endノードを追加します。 - Agentノードの追加
Guardrailsノードの「Pass」の次の処理として、Agentノードを追加します。 - Agentノードの設定(LLMの変更)
ModelのLLMを利用単価が安い「gtp-5-nano」に変更します。 - Agentノードの設定(RAGファイルのアップロード)
Toolsのプラスボタンをクリックして、「File search」を選択します。
「Attach files to file search」のダイアログで、RAG用のファイルをアップロードします。 - Endノードの設定
Agentノードの次の処理として、Endノードを追加します。
- Guardrailsノードの追加
図. RAGを使ったチャットボットのワークフロー -
-
動作確認(正常系)
画面右上の「Preview」をクリックして、アップロードしたRAGファイルにあるテキストで発話してみます。
下図のように、RAGとしてアップロードしたファイルに存在するユニークなテキストが回答されましたので、正常系の動作確認が成功しました。図. 動作確認(正常系) -
動作確認(異常系)
Jailbreak(ジェイルブレイク)の設定がONになっているため、安全性やポリシーに違反する想定のテキストで発話してみます。
下図のように、RAG参照の処理に遷移せずに終了しましたので、異常系の動作確認が成功しました。図. 動作確認(異常系) レスポンスに下記のメッセージがあることからも、Jailbreakの設定によって弾かれたことが推定できます。
"jailbreak": { "failed": true },